間違った手当は思わぬ後遺症に…捻挫・むち打ちの正しい応急処置について

2018年6月14日

みなさん、足首をグキッとひねってしまった経験はありませんか?

足首の捻挫はケガの中でも発生頻度が高く、1日で人口1万人あたり1人が受傷するともいわれています。

特に、スポーツをしている人にとっては日常的なケガですよね。

 

しかし、軽く考えてはいけません。

捻挫をした直後に適切な処置を行わず、放置してしまうと、復帰に時間がかかったり、思わぬ後遺症に繋がってしまうこともあるのです。

今回は、捻挫が起きた際の応急処置についてご紹介します。

 

捻挫は靭帯のケガ

スポーツをしているときに転んだり、ジャンプの着地に失敗し、足をひねったりしたときに起きる捻挫。

経験したことがある方も多いのではないでしょうか?

発生頻度が高いため軽く考えてしまいがちですが、捻挫は「靭帯損傷」、つまりれっきとしたケガなのです。

 

靭帯は、関節の骨と骨を結び、関節を滑らかに動かす役割を担っています。

捻挫とは、靭帯が何らかの理由で伸びたり、部分的、または完全に切れてしまった状態をいいます。

 

症状が軽いときは、簡単な処置で治ります。

しかし、重症の場合、あるいは捻挫をした後の処置に問題があった場合には、痛みがいつまでもとれなかったり、不安定感が残ったりすることがあるのです。

そのような場合には手術が必要になることも…。

 

交通事故による「むち打ち」も捻挫の一種

捻挫が起こるのは足首だけではありません。

交通事故による首やその周辺の痛みや凝り、しびれ、首がまわらないといった「むち打ち」も捻挫の一種です。

 

むち打ちは、その名の通り、交通事故などの衝撃で、体がムチを打ったときのようにしなることからこのように呼ばれています。

なんと、原因の85%は交通事故の際の後方からの追突です。

 

車に追突された衝撃で、体が急激に前へ押し動かされてると、頭は動かないようにそのままとどまろうとします。

その結果、頚椎や脊椎にダメージを受けたり、手や肩を車や道路に打ちつけた反動で首の筋肉を傷めたりしてしまうのです。

 

病院に行った方が良い場合

捻挫が起きた際、ケガの程度を自分で判断するのは難しいです。

次の場合は医療機関での受診をおすすめします。

 

・痛みや腫れがひどく、動かすこともできない

・関節がグラグラして不安定な感じがする

・1~2週間経過しても痛みが治まらない

 

痛みがひどく、動かすことができない場合は、できるだけ早く整形外科を受診しましょう。

また、部位によっては痛みを感じにくいこともあります。

1~2週間しても痛みが引かない、関節に不安定さを感じるときは、念のため受診しておくと安心です。

 

ただし、交通事故によるむち打ちの場合、痛みや違和感がある場合はもちろん、自覚症状がない場合でもすぐに病院へ行きましょう。

むち打ちは事故から数日後に症状が現れやすいという特徴を持っています。

また、交通事故直後の興奮状態で痛みを感じていない可能性もあります。

痛みが出るまで待つのではなく、なるべく早く検査を受けることが大切です。

 

捻挫の手当「RICE処置」

捻挫にかかわらず、ケガをしたときは、応急処置を素早く行うことが大切です。

症状が軽いものであっても、処置を誤ると、復帰までに時間がかかってしまいます。

ただし、脱臼や骨折、大量出血、意識障害などがみられるときは、むやみに動かしてはいけません。

すぐに救急車や医師を呼ぶようにしましょう。

 

応急処置の基本は「RICE処置」です。

これは、Rest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の頭文字をとったもので、患部の腫れや出血、痛みを防ぐことを目的に行います。

 


①Rest(安静)

②Ice(冷却)

③Compression(圧迫)

④Elevation(挙上)


 

【RICE処置】

①Rest(安静)

ケガの直後から、体内では痛めた部位を修復する作業が始まります。

しかし、安静させず、運動を続けてしまうと、その作業の開始自体が遅れてしまうのです。

 

その結果、完治までに時間がかかることになるので、ケガをした後は、安静にすることが大切です。

 

安静は、腫れや血管、神経の損傷を防ぐことが目的です。

ケガをした後に運動すると、患部周辺の関節や筋肉の血行が促進され、脈拍が上昇し、出血が増悪する可能性があります。

 

また、二次損傷を防止する目的もあります。

厚紙や板、タオル、テープなどで患部を固定するのも良いでしょう。

 

【RICE処置】

②Ice(冷却)

患部を冷却することで、痛みや腫れ、炎症を抑えるなどの効果が期待できます。

 

ビニール袋やアイスバッグに氷を入れ、患部を冷却します。

15分から20分冷却したらはずし、また痛みが出たら冷やすというのを繰り返してください。

患部に薄いタオルを置いて、その上から氷を当てるなど、なるべく直接氷を当てないようにしましょう。

 

ケガの直後は、冷却スプレーを用いられることも多いですが、深部には効果がないとされています。

ただし、長時間の冷却による凍傷には注意が必要です。

 

【RICE処置】

③Compression(圧迫)

 

適度な圧迫を加えることで、腫れや炎症を抑えることができます。

 

出血などの外傷で損傷した患部の血管などは、出血がとまらない場合があります。

圧迫することで、患部周辺の動脈を圧迫し、一時的に血流量を落とすことによって、血小板による血管修復のペースを出血量が上回らないようにするためです。

 

タオルや包帯、テーピングなどを患部に巻き、定期的に圧迫を緩めるのが理想的です。

しっかりと巻く必要がありますが、あまりにも強く圧迫することは避けてください。

血行障害や神経麻痺を引き起こす危険性があります。

患部が青くなったり、しびれたりしてないか、よく確認しながら行いましょう。

 

【RICE処置】

④Elevation(挙上)

出血などの外傷で損傷した部位を心臓の位置よりも高く挙上することにより、重力によって出血量を減らすことを目的に行います。

椅子や台など安定したものを利用し、挙上した状態で安静を維持することが大切です。

 

特に、足首のケガの場合は腫れやすいので、数日挙上しておいた方が治りが早くなります。

 

(参考:スポーツ外傷の応急処置―日本整形外科学会)

 

捻挫には冷湿布?温湿布?

痛みを抑えるために市販の湿布を使う方も多いですよね。

湿布には、冷湿布と温湿布の2種類があります。

捻挫に効果的なのはどちらでしょうか?

 

捻挫をした直後、足首に痛みや腫れ、熱感などの炎症があるときは、冷湿布でしっかり冷やすようにしてください。

痛みが和らいで、炎症が治まるまでの間はしっかりと冷却しましょう。

個人差がありますが、1週間くらいが目安です。

 

痛みや炎症が和らいでからは、温湿布に変えましょう。

温湿布で患部を温めることによって、血行が良くなり、患部の修復を促進する効果があります。

 

湿布は、直接皮膚に貼って使用するため、肌が弱い人は、かぶれなどの症状が出る場合があります。

長時間貼り続けることは避けるようにしてくださいね。

 

まとめ

いかがでしたか?

多くの方が経験したことのある足首の捻挫。

軽く考えてしまいがちですが、捻挫が起きた際、適切な応急処置が行われなかった場合や放置した場合には、関節の不安定性や痛みなどの後遺症が残ることがあります。

早期回復のため、また、最悪の状況を避けるためにも適切な応急処置を行うことが大切です。

ただし、交通事故によるむち打ちの場合は必ず病院に行くようにしましょう。