頭痛薬は危険!?熱中症による頭痛のメカニズムと対処法
過ごしやすい春が過ぎ、ジメジメとした梅雨の時期に入りました。
毎年、ニュースなどでよく耳にする「熱中症」。
時には、救急搬送されるほど症状が悪化する場合があります。
実は、熱中症は、暑い夏の季節だけでなく、体が暑さに慣れていない梅雨明けの時期にも起こりやすいのです。
また、強い日差しのもとで運動や作業をするときはもちろん、室内で過ごしているときにも発症することがあります。
放っておくと命の危険もあり、車に残された乳幼児が熱中症で亡くなるという事件も後を絶ちません。
熱中症の症状は、めまいや吐き気などさまざまですが、特に厄介なのが「頭痛」です。
今回は、熱中症の頭痛について詳しく解説していきます。
熱中症の危険性を正しく理解し、暑い夏も安全に乗り切りましょう!
和歌山県は熱中症による救急搬送者数が全国8位!?
総務省の資料によると、平成28年5月から9月までの熱中症による救急搬送人員数は、5万412人。
昨年よりも、約1割減となっています。
しかし、西日本だけで見てみると、救急搬送人員数は、増加傾向にあります。
これは、西日本で夏(6月から8月)の平均気温が高かったことが原因として考えられています。
また、全国の熱中症による救急搬送状況を都道府県別に見ると、人口10万人当たりの救急搬送人員数は、熊本県が最も多く、和歌山県は第8位でした。
和歌山県では、昨年の7月にも熱中症で男性が死亡するというニュースがありました。
7日午前9時10分ごろ、和歌山県橋本市隅田町芋生にあるコンクリート製品の工場で、屋外で作業をしていた男性(36)が倒れていると通報があった。橋本市消防本部などによると、男性は意識不明の状態で搬送され、その後死亡が確認された。熱中症の疑いがある。
和歌山地方気象台によると、橋本市に隣接するかつらぎ町の7日の最高気温は34.1度だった。
熱中症のメカニズム
では、そもそも熱中症とは何かご存知ですか?
私たちの体からは、多くの熱が生まれています。
心臓や脳は休みなく動いているため、じっとしていても絶えず熱は発生しているのです。
これを「産熱」といいます。
産熱によって、体温が上がりすぎてしまった場合、自律神経の働きで、末梢神経を広げ、皮膚に多くの血液を流れ込ませることや汗を欠くことで体の外へ熱を逃がします(「放熱」)。
このように私たちは、体温調節機能を持っているのです。
しかし、高温多湿の環境に長時間いるとこの機能に乱れを生じさせることがあります。
すると、体内に熱がこもったり、体内の水分や塩分が急激に奪われたりします。
その結果、けいれんやめまい、吐き気などの全身にさまざまな症状を引き起こすのが熱中症です。
熱中症の重症度による分類
熱中症の症状は、重症度によって次の3段階に分類されます。
Ⅰ度:現場で対応可能な軽度
・めまい
・立ちくらみ
・生あくび
・大量の発汗
・筋肉痛
これらの症状は、熱中症の初期症状です。
日陰や室内といった涼しいところに移り、十分に休みましょう。
また、体を冷やし、失われた水分と塩分を水やスポーツ飲料などを飲むことによって応急処置をします。
しばらく様子を見て、良くならないようであれば、医療機関を受診しましょう。
Ⅱ度:医療機関での診療が必要な中等度
・頭痛
・嘔吐
・倦怠感
・虚脱感
・集中力や判断力の低下
Ⅱ度の段階では、軽い意識障害が現れることがあります。
日付や自分の名前、生年月日が言えないなど、いつもと様子が違い、少しでも意識がはっきりしない場合は、病院への搬送が必要です。
Ⅲ度:入院加療や場合によっては集中治療が必要な重度
・中枢神経症状(意識障害、小脳障害、痙攣発作)
・肝・腎機能障害
・血液凝固異常
呼びかけや痛みなどの刺激への反応がおかしかったり、まっすぐに走れなかったりといった症状が現れた場合は、一刻も早く医療機関を受診する必要があります。
これらの分類は、熱中症らしき人の異常を早く判断し、応急処置を受けるようにするために作られたものです。
しかし、必ずしも上記の分類にぴったりと当てはまるというものではありません。
環境や状況によっても症状は刻々と変化し、はじめはⅠ度であったとしても、すぐに重症化して死に至る可能性もあります。
軽症であっても放っておくのではなく、少しでもおかしいなと感じたらすぐに病院へ行きましょう。
梅雨明け直後は要注意!熱中症の要因
熱中症を引き起こす要因として、次の3つがあります。
①環境要因
・気温や湿度が高い
・日差しが強い
・風通しが悪い
②体の状態
・体調が悪い
・高齢者や乳幼児
・肥満
・寝不足
・暑さに体が慣れていない
③行動
・激しい運動
・炎天下で長時間の作業
・不十分な水分補給
これら3つの要因が重なると、熱中症が起こりやすくなると考えられています。
梅雨の晴れ間や梅雨明けの直後は特に注意が必要です。
また、運動場や公園、海、プールなど屋外だけでなく、浴室やトイレなどでも熱中症が起こる危険性はあります。
特に、長時間、駐車場に車を止める場合は、外の気温が20℃程度であっても、車内は50℃近くなります。
乳幼児が車に閉じ込められたことによる死亡事故も後を絶ちません。
小さなお子さんがいる方は絶対車内に1人で残さないようにしてください。
発症状況を年齢別にみてみると、10代ではスポーツ中、30代から50代では勤務中、65歳以上では日常生活での発症が多いとされています。
熱中症になりやすい人として、高齢者や乳幼児、運動習慣がない人、肥満気味の人などが挙げられます。
特に高齢者や乳幼児は、体温調節機能が低いため、体内に熱がこもりやすいにもかかわらず、暑さを自覚しにくいことがあります。
また、子供は大人より身長が低いため、アスファルトの照り返しなどを受けやすいことも要因の一つです。
その他、心臓病や糖尿病、高血圧、腎臓病、精神神経疾患、皮膚疾患などの持病がある方も注意が必要です。
これらは、体温調節機能の乱れの原因になります。
また、薬を服用している場合、発汗の抑制や利尿作用があるものもあり、熱中症の原因になることがあります。
(参考::熱中症の予防方法と対処方法―環境省熱中症予防情報サイト)
熱中症4つの種類
熱中症は、高温多湿な環境に、私たちの体が適応できないことで生じるさまざまな症状の総称で、次のように分類されます。
1.熱失神
2.熱けいれん
3.熱疲労
4.熱射病
【熱中症の種類】
1.熱失神
・めまい
・一時的な失神
・顔面蒼白
熱失神とは、上昇した体温を下げようと、皮膚の血管が広がることによって、血圧が低下したり、全身への血液量が減少したりするために起こります。
運動を止めると、それまでポンプのように機能していた筋肉が停止し、一時的に脳への血液量が減少するため、運動後に起きやすいと考えられています。
熱失神は、熱中症の初期症状です。
そのため、なるべく早くこの症状に気づけるかどうかが問題になります。
上記の症状以外にも、口唇のしびれや立ちくらみ、呼吸回数の増加などが挙げられます。
また、全身への血液量を増やそうとするために、不整脈が見られることがあります。
熱失神の症状が現れた場合は、日陰や室内に移動し、衣服をゆるめ、水分補給を行い、しばらく安静にするようにしましょう。
血液の循環を促すために、足元を高くさせると効果的です。
また、四肢を指先から体の中心に揉むのも良いでしょう。
水分補給は、0.1から0.2%程度の塩分を含んだ食塩水やスポーツドリンクが適しています。
熱失神の予防として、しっかりと水分をとるようにしてください。
のどが渇いていなくても、外出時はこまめに水分補給をしましょう。
具合の悪さを感じたら、日陰などの涼しい場所で安静にすることが大切です。
【熱中症の種類】
2.熱けいれん
・筋肉痛
・手足がつる
・筋肉がけいれんする
熱けいれんは、炎天下での激しい運動などで誘発される筋肉の収縮です。
スポーツ選手や熱のこもる作業場での肉体労働者などに多く起こります。
また、運動や作業が終わった後の入浴中や睡眠時にも発症することがあります。
汗をかくと、体の外へ塩分が排出され、体内のナトリウムが不足します。
そこに塩分や電解質の含まれない飲み物を飲むと、体内の塩分濃度はさらに下がり、「低張性脱水症」を引き起こします。
低張性脱水症の場合、のどの渇きや体温上昇、皮膚乾燥などの症状が見られないため、脱水と自覚できないこともあります。
上記の症状以外にも、内臓や血管などの壁の役割をしている平滑筋という筋肉がけいれんを起こすことによって、腹痛や吐き気、嘔吐といった症状が現れることがあります。
熱けいれんの症状は、数分から数時間で収まります。
症状が現れたら、涼しいところへ移動し、休みましょう。
顔面蒼白など血圧の低下が見られるときは、足元を高くするようにしてください。
特に大切なのが、水分補給です。
熱けいれんを起こす前にこまめに水分補給を行うことが大切ですが、熱けいれんの症状が出た場合、意識があり、吐き気がないときは、0.1から0.2%程度の塩分を含んだ食塩水やスポーツドリンクを飲むようにしましょう。
また、けいれんの起きている筋肉を伸ばしたり、マッサージを行ったりするのも効果的です。
【熱中症の種類】
3.熱疲労
・全身倦怠感
・悪心
・嘔吐
・頭痛
・集中力や判断力の低下
熱疲労は、熱けいれんよりも水分やナトリウムが不足し、重症度が増した状態です。
熱疲労の場合、体の血液量が不足するためにいくつもの症状が一度に現れます。
涼しい場所で、水分補給を行いましょう。
改善が見られないときは、すぐに病院へ行くようにしてください。
【熱中症の種類】
4.熱射病
・体温が高い
・意識障害
・呼びかけや刺激への反応が鈍い
・不自然な言動
・ふらつき
熱射病は、熱中症の中でももっとも重いとされるものです。
体温の上がるスピードが速く、汗を出すことによって体温を下げることができにために起こります。
熱射病になると、体温が上昇し続け、命の危険性もあります。
そのまま放置してしまうと、高熱によって体温調節機能が破綻し、臓器に障害が出始めるのです。
心臓や腎臓、肺、肝臓などの循環器系や神経に損傷が現れ、回復が困難となり、多臓器不全を引き起こし、死に至るケースもあります。
熱射病と似ている言葉として「日射病」があります。
これらの違いをご存知でしょうか?
日射病と熱射病は、どちらも熱中症に分類されます。
日射病とは、太陽の光を直接浴び、太陽光の熱に体が耐え切れなくなることによって起きる症状です。
一方、熱射病は、外気の温度が自分の体温よりも高いとき、外気の温度に合わせようと、体温が上昇することによって、体に熱が蓄積され、体温調節機能が対応しきれずに支障をきたした状態を言います。
(参考:熱中症の種類―大塚製薬)
頭痛薬じゃ治らない!?熱中症による頭痛の危険性
これまで熱中症の症状をたくさんご紹介しましたが、特に厄介なのが「頭痛」です。
熱中症による頭痛は、普通の頭痛と違って治りにくく、頭痛薬を飲んでも収まらないことがあります。
頭痛薬には、炎症を鎮めたり、熱を下げたりという効果があります。
一般的な頭痛の場合は、これで収まりますが、熱中症による頭痛の原因は、脱水状態です。
これを何とかしない限り、痛みは収まらないのです。
また、熱中症の時に頭痛薬を飲むのは危険とも考えられています。
脱水状態で解熱鎮痛剤を服用すると、低血圧や痙攣が引き起こされる可能性があるためです。
そのため、まずは一般的な頭痛と熱中症による頭痛を見分ける必要があります。
熱中症による頭痛は、締め付けられるような痛みであることが多いです。
また、めまいや吐き気、倦怠感などの症状が出るという特徴もあります。
対処法として、大切なのは、やはり水分補給です。
とにかく水分と塩分を補給しましょう。
0.1から0.2%程度の塩分を含んだ食塩水やスポーツドリンクがおすすめです。
ただし、脱水症状を解消しただけでは熱中症の症状は収まりません。
さらに体温を下げる必要があるのです。
日陰や室内などの涼しい場所へ移動し、首筋やわきの下など、早急に体温を下げることができるポイントを重点的に冷やすようにしてください。
大したことないだろうと放っておくと危険です。
少しでも違和感があれば、すぐに病院へ行くようにしてください。
まとめ
いかがだったでしょうか?
熱中症は放っておくと、とても危険です。
普段からこまめに水分補給を行うのが大切だということが分かっていただけたと思います。
熱中症による頭痛の症状がでたときは、自分自身の判断で、これくらいなら我慢できると思わずに、しっかりと病院で診察してもらってください。
まだ真夏じゃないから大丈夫だからではなく、普段から気を付けておきましょう。
熱中症予防で、楽しい夏を安全に過ごしましょう!