貧血による頭痛は脳の酸素不足が原因だった!40代女性の4人に1人が抱える「鉄欠乏性貧血」とは
・立ちくらみがする
・頻繁にめまいが起こる
・動悸や息切れがする
・疲れやすい
・顔色が悪いと言われる
このような症状でお困りではありませんか?
いくつも当てはまるという方は、貧血状態に陥っている可能性があります。
貧血にお悩みの女性は多いですよね。
貧血といえばめまいを思い浮かべる方も多いかもしれませんが、貧血が引き起こす症状は実にさまざまです。
その中でも意外に多いのが頭痛。
今回は貧血と頭痛の関係についてご紹介します。
貧血の原因「鉄分不足」
貧血とは簡単に言うと、血液が薄くなっている状態です。
貧血の原因の大部分は「鉄分不足」。
血液の成分の一つである赤血球は、その成分であるヘモグロビンが酸素と結合することで、体中に酸素を運ぶ役割を果たしています。
そして、このヘモグロビンを作るために必要なのが鉄分です。
鉄分が不足すると、ヘモグロビンも不足するので、酸素の運搬がうまくいかなくなってしまいます。
そうした状態で、少しでも酸素を体中に送ろうと心臓や肺が激しく働くため、動機や息切れをはじめとした症状が起こるのです。
女性の4人に1人は鉄欠乏性貧血
貧血にはなったことがない!放っておいても問題ない!と考えていませんか?
貧血というとクラクラとめまいがして倒れこむというようなイメージがあるためか、自分には関係ないと思っている人も少なくありません。
実は、貧血になる可能性は誰にでもあるのです。
下の表は厚生労働省が行った平成27年国民健康・栄養調査から男女別に貧血の割合を示したものです。
(出典:厚生労働省「平成27年国民健康・栄養調査」)
どの年代を見ても、男性よりも女性の割合が高くなっています。
特に30代女性の23.5%が貧血であり、これは男性の13倍もの割合です。
貧血にはいくつかの種類がありますが、貧血と診断された方の多くは鉄分が不足することによって起こる「鉄欠乏性貧血」です。
なんと、40代日本人女性の4人に1人がこの鉄欠乏性貧血だといわれています。
鉄欠乏性貧血3つの特徴的な症状
鉄欠乏性貧血の特徴的な症状として以下のものが挙げられます。
①異食症・氷食症
異食症とは通常食べないものを無性に食べたくなってしまう症状で、鉄欠乏性貧血の特徴的な症状の一つです。
鉄欠乏性貧血の場合は、氷やせんべいなどの硬いものを好んで食べる傾向にあります。
貧血による脳の酸素不足や体内の鉄分不足で中枢神経に異常をきたし、このような行動に走ると考えられています。
この症状は鉄剤を服用することで数日で治まる場合が多いです。
ただし、異食や氷食の症状が治まっても貧血が治ったというわけではありません。
②爪の変形
鉄欠乏性貧血になると、肌や爪が血色のない白色になる場合があります。
さらに貧血がひどくなると、爪がスプーン状に反り返るスプーン爪と呼ばれる状態になったり、爪が割れたり、表面がはがれたりすることがあります。
③味覚・嚥下障害
舌の表面には小さなブツブツがあり、そこには味覚を感じる味蕾(みらい)があります。
鉄欠乏性貧血がひどくなると、この味蕾がなくなり、味覚障害が起きることがあります。
また、食道の粘膜が萎縮して食道が狭くなり、食べ物を飲み込みにくくなることもあります。
これを嚥下(えんげ)障害と呼びます。
鉄分不足の原因
では、なぜ鉄分が不足してしまうのでしょうか?
その原因として食生活が挙げられます。
私たちの体内に存在する鉄分のうち70%はヘモグロビンとして存在しており、残りの30%は肝臓などに蓄えられた貯蔵鉄として存在しています。
鉄分は私たちにとって大切なミネラルなので、通常の状態では体内の鉄分量を減らさないような仕組みになっています。
ただし、女性の場合は生理や妊娠などで不足した鉄分を貯蔵鉄で補わなくてはいけません。
この状態が続くと、貯蔵鉄が使い果たされ、鉄欠乏性貧血が起こってしまうのです。
女性の場合、生理や妊娠などによる鉄分の損失を考慮して、1日に摂取する鉄分量は12mgと決められています。
貧血による頭痛の原因「脳の酸素不足」
頭痛を引き起こす原因は多くありますが、そのひとつとして「脳の酸素不足」が挙げられます。
脳が酸欠状態に陥ることで起こる頭痛は、ズキンズキンと脈打つように痛むものから、頭が重くどんよりとするようなものまでさまざまです。
貧血になると体の隅々にまで酸素を運ぶことができず、全身で酸素不足が起きている状態になります。
人間の体でもっとも酸素消費が大きいのは脳です。
貧血によって酸素が不足すると、一番影響が出やすいのが脳なのです。
酸素が不足すると、酸素を燃やして作るエネルギー回路が利用できないため、体にとってはかなり大きな負担がかかることになります。
貧血による脳の酸素不足で、頭痛や注意力・判断力の低下、神経症状などの影響が出ます。
高い山に登ったときなど、酸素が薄いところにいると、激しい頭痛や吐き気に襲われることがあります。
これを高山病といいますが、この原因も脳の酸素不足だと考えられています。
つまり、貧血によって引き起こされる頭痛は普段の生活をしていても高山病になってしまうようなものなのです。
(参考:【医師監修】貧血や鉄分不足で頭痛が起きる?―ヘルスケア大学)
生理中は20mgもの鉄を失う
貧血患者の7割を占める鉄欠乏性貧血は、その原因のほとんどが継続的な出血によるものです。
生理による出血もこの継続的な出血に当てはまり、生理中の女性は1月当たり20mgもの鉄を失っていることになります。
成人女性の多くが鉄欠乏性貧血の状態にあるのもこのためです。
一般的には、1日に必要な摂取カロリー量のバランスのとれた食事を摂ると平均10mgの鉄分が摂取されるため、無意識に鉄分のバランスがとれていることになります。
しかし、生理の場合には、出血によって失った分だけ余計に鉄分をとる必要があります。
生理によって失われた鉄分を余計にとるためには、食生活を見直さなくてはなりません。
この不足している分を食生活の工夫や鉄剤で補うことで、鉄欠乏性貧血は克服することができます。
鉄欠乏性貧血はなりやすい貧血である反面、必要な鉄分をしっかりとれば治りやすい貧血でもあるのです。
生理は女性の宿命でもありますが「貧血になるのは仕方ない…」と諦める必要はありません。
妊娠中は貧血に陥りやすい
妊娠をすると胎児にも栄養と酸素を与え続けなければならず、それだけ多くの血液が必要になります。
そのため、母体は自らの機能をフル回転させ、血液をつくり続けます。
また、妊娠中は胎盤への血液供給や胎児への栄養・酸素供給、分娩時の大量出血に備えるため、血液量は最大36%増加します。
その内訳として、赤血球よりも血しょうのほうが増加するので、血液中に占める赤血球の割合が低下し、血液が薄くなり、貧血が起こりやすい状態となるのです。
このように妊娠中は鉄の需要が増大するにもかかわらず、つわりで食欲がなくなるなど、鉄不足に陥りやすくなります。
つわりは妊娠4~6週から始まり、7~9週につらさのピークを迎えるとされていますが、その時期は赤ちゃんの臓器形成にも大事な時期であり、より鉄分が必要とされます。
つまり、赤ちゃんにとって大事な時期に、思うように食事から鉄分を摂取できないということになってしまうのです。
鉄剤による貧血の改善効果は最低でも1~2か月後であるため、妊娠前から貧血の場合、妊娠に気づいてから慌てて鉄分を摂取しても、赤ちゃんの大事な時期に間に合わなくなる恐れがあります。
さらに妊娠中期以降は、胎児の急速な発育に伴って、鉄分の需要が大きく増えるため、鉄分の摂取を非常に意識しなければなりません。
日本では、妊婦の3割以上が貧血だというデータもあります。
妊娠中の貧血は、母体にも胎児にも悪い影響を及ぼします。
かつて、妊婦の貧血は流産や早産の原因となるなどの問題が指摘されていました。
妊婦の貧血によって胎児へ鉄分が十分に供給されないと、胎児の発育が遅れ、赤ちゃん自身が貧血になる恐れもあります。
最近では妊娠検診が確実に実施されるようになり、以前のような問題は少なくなっています。
ただし、貧血が起きやすいことに変わりはないので、妊娠中は特に注意しましょう。
鉄剤は吐き気を催すこともあり、つわりでつらい時期に服用するのは難しい場合もあります。
しかし、妊娠中に適切に鉄剤を服用することで、早産や低出生体重児のリスク軽減につながることがわかっています。
(参考:妊娠初期は貧血になりやすい?どんな症状が出る?対策は必要?―こそだてハック)
鉄欠乏性貧血はバランスの良い食事と規則正しい生活習慣で改善できる
赤血球は、全身の細胞に酸素を運ぶ生命維持に欠かせない存在です。
その赤血球の主成分は鉄分を含むヘモグロビンであり、体内で鉄分が不足するということは生命維持に大きな影響を与えます。
私たちの体内には一時的な鉄不足に対応できるよう貯蔵鉄が存在しており、鉄分が不足した場合には、貯蔵鉄によって不足を補おうとします。
そのため、鉄の摂取量が不足したからといって、すぐに鉄分不足になるというわけではありません。
つまり、鉄欠乏性貧血になったということは、貯蔵鉄をすべて使い果たしたということであり、鉄分補給が必要になります。
しかし、鉄欠乏性貧血が改善しても、鉄分不足に至った生活を改めなければ鉄欠乏性貧血は再発してしまいます。
特に偏った食生活による鉄分不足が原因だった場合はなおさらです。
食事を抜いたり、インスタント食品で簡単に済ませたりすると、1日に十分な量の鉄分をとるができません。
食事療法で重要なポイントは、鉄分だけを偏ってとるのではなく、栄養のバランスがとれた食事を心がけることです。
これらの栄養をきちんと消化し、効率良く吸収するためにも、しっかりと噛んで食べることが大切です。
そうすることで胃酸が十分に分泌され、鉄分をはじめとする栄養が効率的に吸収されます。
また、鉄分を多くとると腸の働きが弱まり、便秘がちになるので、便秘予防のために、水分や食物繊維などもとるように心がけましょう。
胃腸の健康管理も大切です。
アルコールの飲み過ぎや食べ過ぎ、ストレスによって胃腸に負担をかける生活を続けていると、胃腸の働きが低下し、栄養素の吸収がうまくいかなくなります。
胃腸の健康を維持するためには、暴飲暴食を避けるようにしましょう。
負担にならない程度の軽い運動や睡眠時間を十分にとることも重要です。
鉄欠乏性貧血は鉄分を含むバランスのとれた食事と規則正しい生活習慣でかなり改善できる治しやすい貧血でもあるのです。
特に、成長期の子供や生理のある女性は注意が必要です。
普段から鉄分を多く含む食物をとるように心がけましょう。
また、最近では鉄分を添加した食品やサプリメントも多く市販されているので、これらを利用するのも効果的です。
鉄欠乏性貧血に効果的な5つの栄養素
鉄欠乏性貧血を改善するには鉄分の摂取が必要不可欠ですが、ただ鉄分をとれば良いというわけではありません。
吸収しにくい鉄分を効率良く摂取すること、赤血球に必要な栄養素を摂取することが大切です。
【鉄欠乏性貧血に効果的な栄養素】
①ヘム鉄
食品に含まれる鉄分には吸収されやすいヘム鉄と吸収されにくい非ヘム鉄があります。
効率良く鉄分をとることのできるヘム鉄は鉄欠乏性貧血の改善に効果的。
しかし、野菜や海藻を多く食べる日本人は非ヘム鉄からの鉄分摂取の割合が高い傾向にあります。
そのため、吸収されにくい非ヘム鉄を吸収されやすくする栄養素もあわせて摂取し、効率よく非ヘム鉄を体内に取り込むことが大切です。
【鉄欠乏性貧血に効果的な栄養素】
②ビタミンC
非ヘム鉄の吸収を促進する栄養素としてビタミンCがあります。
ビタミンCは胃の中で鉄分と作用し、鉄分を吸収されやすい形に変化させます。
食物から摂取した鉄分の吸収率は10%しかなく、ビタミンCの働きがなければ吸収率はさらに下がってしまいます。
また、赤血球がつくられる際に重要な葉酸の働きを高める効果もあります。
ただし、ビタミンCは体内で合成することができず、水に溶けやすいため、一時的に大量にビタミンCを摂取しても過剰な分は排出されてしまいます。
つまり、貧血を予防するにはビタミンCを多く含む食品を毎日積極的にとることが大切なのです。
【鉄欠乏性貧血に効果的な栄養素】
③タンパク質
良質なタンパク質は鉄分の吸収を促進する働きを持ち、赤血球を構成する主成分です。
そのため、食事で十分なタンパク質を摂取しなければ、体内に蓄積されているタンパク質が不足するため、赤血球の生産や臓器の働きが低下してしまいます。
胃腸の働きが落ちると、胃酸の分泌が弱まります。
胃酸には食べ物に含まれる鉄分を溶かし、腸からの吸収を助ける働きがあります。
つまり、胃酸分泌の低下は鉄分の吸収障害を招いてしまうのです。
良質なタンパク質は貧血を防ぐ上で非常に重要な栄養素です。
この良質なタンパク質とは、体内でつくることのできない8種類の必須アミノ酸を含んだタンパク質のことをいいます。
これらは、肉や魚、卵、乳製品、大豆などに含まれています。
ただし、1つの食材ですべての必須アミノ酸をとることはできないので、バランス良く食材を組み合わせることが大切です。
【鉄欠乏性貧血に効果的な栄養素】
④ビタミンB12
ビタミンB12は赤血球だけでなく、血球すべてをつくる際に欠かせない栄養素です。
不足すると血球が正しくつくられず、悪性貧血を引き起こしてしまいます。
ビタミンB12は、レバーや肉、卵、牛乳に含まれており、これらの食品を定期的に食べていれば特に足りなくなることはありません。
【鉄欠乏性貧血に効果的な栄養素】
⑤葉酸
葉酸も血球をつくる上で欠かせない栄養素です。
ビタミンB群のひとつである葉酸は、レバーや貝類、ブロッコリー、ほうれん草、キャベツ、パセリなどに多く含まれています。
葉酸も体内でつくることができないため、食物から摂取する必要があります。
葉酸は、緑黄色野菜にも多く含まれており、日本の食生活で不足することはほとんどありません。
ただし、妊娠中は葉酸の需要が増えるため、葉酸不足になりやすいといわれています。
水に溶けやすい物質なので、尿などで排出されやすく、体の中に蓄えておくことができません。
毎日欠かさずに食べることが大切です。
(参考:鉄分だけじゃダメ!貧血を改善する栄養素とは―わかりやすい貧血の知識)
まとめ
いかがでしたか?
女性の場合、生理や出産などで貧血に悩んでいる方は多くいらっしゃいます。
仕方ないことだからと諦める前にバランスのとれた食事や規則正しい生活習慣で改善していきましょう。